【最高裁へ問う】① [高裁判決批判⑪] 資料館の独自見解

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最高裁判所へ問う① [高裁判決批判⑪]

森永ヒ素ミルク中毒事件資料館 岡崎久弥

2026年2月18日 15:27

 高裁判決批判シリーズ①~⑩の連載をまとめてみた。特に⑩をお読みいただいた方には、ご理解いただける論旨だと考えている。

 まず法律審である最高裁審理を見越して、下級審の重大な審理上の錯誤と、憲法違反の該当項目についての最少限を、森永ヒ素ミルク中毒事件資料館の独自の見解として提示したい。もちろん重要な争点が他にもあることは言を俟たない。それらは今後、専門家によって構築されるだろう。

 浅学菲才・法律の素人がねじり鉢巻きで考えたものだから間違いも多々あると思う。ご意見・ご批判、歓迎である。

 【追加稿】2026.2.25 末尾に当館による原審批判の要約版を追加しました。

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目次

  1. 森永ヒ素ミルク中毒事件大阪訴訟における下級審は「基準時設定の誤り」と「未確定損害の処理の誤り」で、重大な法令違反を犯した。

  2. 2026年2月18日森永ヒ素ミルク中毒事件資料館 岡崎久弥

  3. 第1 基準時に関する判断の法令違反

  4. 起算点はいまだ到来していない

  5. 第2 未確定損害の処理の誤り

  6. 最終の大手術は最後の医療手段と宣告、事実上の別損害に該当

  7. 第3 憲法32条違反 

  8. 裁判を受ける権利の侵害

  9. 原告による訴訟アクセスは全面的に遮断されてきた

  10. 信頼保護原則にも違反

  11. 第4 憲法14条違反

  12. ─────────────────

  13. 【結論の要約版】

  14. 第1 法令違反(旧民法724条の解釈誤り)

  15. 1 基準時設定の誤り

  16. 2 未確定損害の処理の誤り

  17. 第2 憲法32条違反

  18. 第3 憲法14条違反

  19. ─────────────────

  20. 【原審判決(大阪地裁)批判】

  21. 結論ありきの構成

  22. 病名告知を強引に起算点にする愚

  23. 後知恵バイアスを密かに悪用。症状固定なく損害を知ることが可能と強弁

  24. 健常者の言論さえ「つぶす」包囲網──訴訟アクセスの困難性

  25. 「行政協力シフト論での免罪」「ヒ素ミルク飲んで良かった」宣伝で、重症被害者を包囲

  26. 「除斥」を適用してはいけないケース

  27. ゆがんだメッセージを発信

森永ヒ素ミルク中毒事件大阪訴訟における下級審は「基準時設定の誤り」と「未確定損害の処理の誤り」で、重大な法令違反を犯した。

2026年2月18日
森永ヒ素ミルク中毒事件資料館 岡崎久弥


 下級審の判示は、後発的知見による遡及的評価の手法(後知恵バイアス)でもって「除斥」の強行適用に拘泥した。

 これに拘泥するあまり、第一義的に、予見可能性の基準時を大きく誤った。これこそ、法的安定性を害する行為で、「法的安定性」を謳いながら強行する「除斥」適用の論理と矛盾する。

 よって、森永ヒ素ミルク中毒事件資料館は、下級審である大阪地裁・大阪高裁における判示の骨子を貫く内容に、以下、要旨「基準時設定の誤り」と「未確定損害の処理の誤り」という重大な過失が存在していると考え、それについての疑義を最高裁判所にむけて公開提起する。

第1 基準時に関する判断の法令違反

 まず最高裁は、従前から、「損害を知る」とは、損害の発生とその内容を現実的に認識しうる時であり、単なる抽象的可能性では不足である、との立場である。つまり未確定損害については、損害が具現化するまでは起算しない。
 これはいわゆる「現実認識時説」として広く知られている。
(『森永ヒ素ミルク中毒事件大阪訴訟一審記録───重症被害者の人権と尊厳を侵犯する森永乳業と財団法人ひかり協会の虚構』森永ヒ素ミルク中毒事件弁護団 2025年7月10日刊行 86頁より)

 そして、単純な事実だが、原告は訴訟提起時でさえ、症状固定はなされておらず、訴訟提起後に、最大級の大手術を余儀なくされた。まさに命を長らえるために、危険を冒して実施した手術である。
 もはや、これ以上の手術は、原告の身体へのダメージから不可能だろうと医師から宣告されている。平易に言うと、体がボロボロになっており手術に耐えられない状態になっているわけだ。したがって、いわゆる「生命侵襲手術」ともいえるべき大手術を受けたことになる。

 2022年をすぎてからも、身体耐性の限界、医療選択肢の消滅、生命維持リスクの飛躍的増大等々が発生したことは明らかである。

 言わずもがなだが、これらは、従前の被害の量的拡大ではなく、身体的な耐性の限界に到達しており、質的にも異なる損害が発生しているといえる。

 原告側弁護団が提出したところの質的変化を次々に遂げてきた疾病生活史の証拠をみるなら、最終段階の手術のダメージと、その意味の大きさは明らかだ。

第2 未確定損害の処理の誤り


 下級審は、「病名から損害が同じだ」と言わんばかりであるが、病名の包括性を理由に損害の単一性を認めるのは、法解釈の誤りである。

 損害は病名ではなく、保護されるべき利益の侵害、被侵害利益の質、侵害の程度などで判断されるものだからだ。

最終の大手術は最後の医療手段と宣告、事実上の別損害に該当

 国指定の障害等級が、三級から一級に重症化している歴然とした事実のなかで、機能障害の質が変わっていることも明らかであり、同時に生命維持の危険性さえ発生している。そして決定的な医療選択肢が消滅する場合、法は通常、別損害と評価する。下級審は、この当たり前の判断を、あえてしなかった。

 話をもとにもどすと、当然ながら、起算点は訴訟提起時には存在しておらず、その後になるかもしれない、というだけだ。固定的損害と、食品公害での乳児期の重金属摂取被害を同一視することは、前提からして錯誤である。

 しかしながら、原審及び控訴審判決は、この最高裁のもっとも重要な判示について、旧民法724条の解釈を誤り、重大な誤りを犯した。

 原判決は、行為当時未確定であった医学的知見を基礎に、症状悪化の予見可能性を肯定し、未確定損害が具現化していない時期を起算点にした。

 根本的に法令解釈を誤ったものである。

第3 憲法32条違反 

裁判を受ける権利の侵害

 原告のような乳児期に猛毒のヒ素を摂取させられたという極めて特殊な進行性障害、そしてその後遺症が医学的にほとんど特定不可能な状態において、疾病症状の悪化前の段階で請求内容を予測しなければならないとする解釈は、実質的に裁判を受ける機会を奪うものだ。

 また、原告側提出証拠で下級審が採用しているのは、被告の資金拠出の規模だけである。
 個々の被害者の事情を無視し、さらに被告が救済を一任、委託しているという公益財団法人「ひかり協会」に根強くみられる、社会常識一般からしても異常な管理支配、言論封殺の構造は、なんら考慮されていない。
 政治的要素にそんたくするあまり、きわめて恣意的判断に終始した。

原告による訴訟アクセスは全面的に遮断されてきた

 この事実認定はさておき、第二の問題は、原告の訴訟アクセスは全面的に遮断されてきたことを下級審が顧みず、被告が指示に従うという公益財団法人「ひかり協会」の実行している数々の不法行為、まん延状態にある人権侵害行為と被害者への露骨な言論統制、被告と癒着した形での異論封殺工作をしている(もはや多くの公開情報が示されている)諸事実からみると、原告による訴訟アクセスは全面的に遮断されてきた、というしかない。

 下級審は、協会はほどよく仕事をやっているという論調だが、それなら、言論封殺の仕事もほどよくやっているとなる。
 同協会職員による、異論を提出した岡山の重症被害者女性へ生存を脅かすほどの差別的暴言を発した事実などは、恐怖支配の存在を十分証明しているが、一顧だにしていない。

 下級審は、それらすべての証拠に目を閉ざして、一時期、一人の弁護士に依頼したことがある、という事象をもって、全面遮断ではなかったかのように展開した。

 だが、そこで実際に遮断されたからこそ、訴訟に踏み切れなかったことは明らかな事実である。原告の必死の努力を逆手にとって逆の結論に導く行為には、論理性は認められず、そもそも審理への信頼性を損なう。
 現在のように強力な弁護団が編制されない限り、原告は抵抗できなかったという明らかな事実、そして異常な支配の効力は、請求行為を実質的に全面遮断するに十分な事象というほかない。

 また付け加えれば、任意団体内部の行為は、それが社会的影響力を持つ場合、その事案を裁判所が看過し不問に伏すことは許されない。ここは、多くの関係者が間違うところである。

信頼保護原則にも違反

 さらに、信頼保護原則(いわゆる信義則)にも違反する。
 原告弁護団も述べているように、森永ヒ素ミルク中毒事件では国家が国民からの信頼を自ら積極的に破壊し、被告の代理人となって被告の免責のために、「後遺症はあり得ない」という不正な診断基準を採用・運用し20年近くにわたって被害を封殺してきた。
 これには多くの厳しい批判とともに、診断基準を作成した医師グループの代表らは、最終的には謝罪に追い込まれた。

 その後、国家は責任を認めたが、内実がともなっていない。
 
 被害者をめぐる後遺症判定に関しては通常の医学に復帰したとしても、それは「乳児がヒ素を飲んでも後遺症はない」という無根拠断定結論の被害者への強制から些少の移動をしたにすぎない。つまり、「乳児がヒ素を飲んだ場合の後遺症の展開は不知」であるとしか言えない状態になったに過ぎない。

 森永ヒ素ミルク中毒事件の後遺症の展開に関しては、医学的不確実性があまりに濃厚かつ明らかである。したがって、それが前提で制度運用されている。そうである以上、その後に逆算的に請求を否定する行為、つまり下級審判決の骨子は、信頼性の破壊である。

 これを手短に補足する。

 飲用認定が被害者認定になるという現状ひとつでも、明らかだ。もっとも、それは国がヒ素摂取の後遺症追跡を全母集団でもって実行する意志が過去にも、かつ、未だに存在しないことに由来している。

 このあからさまな事実に、国と司法機関は最大限の注意を払うべきだ。
 
 被告は、今訴訟で、驚くべきことに、ヒ素中毒と原告の脳性麻痺の因果関係を公式に否定し、なにか慈善事業で金銭支給をしているかのごとく主張している。
 「ひかり協会」に被告企業への礼賛をさせている時点で、支給金員を広告宣伝費くらいに考えている被告の底意も見えるが、いずれにしても被告はカネを出していても、中身では一遍の反省もしていない。この恐るべき二面性の実態を示す証左である。

 いずれにしても、「因果関係論」の未確定は、20年間被害を封殺した被告と国の責に100%帰する問題であり、今更それを「確定」できないなどと述べることは許されない。

 よって、すべての事情を考慮すると、原判決の解釈は憲法32条に違反する。

第4 憲法14条違反

 進行性の重度被害を有する被害者を固定的被害者と同一に扱うことは、合理的区別と配慮を欠き、実質的平等原則に反する。

 進行性の公害被害において、後発的医学的確実性を遡及的に適用し請求権を消滅させる解釈は、憲法上許されない。

 障害者保護の諸法規、国際条約違反とともに、これらは、過去の連載で縷々、述べてきたので省略する。

以上


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【結論の要約版】

第1 法令違反(旧民法724条の解釈誤り)

1 基準時設定の誤り

 最高裁判例は、「損害を知った時」とは、損害が現実に発生し、その内容を認識し得る時であるとする(現実認識時説)。
 本件原告は、訴訟提起後にも、新たな大手術を余儀なくされ、その後は医療選択肢の消滅と生命維持リスクの増大を抱えている。これは、訴訟提起後に発生した質的に新たな損害であるとさえいえる。
 にもかかわらず原審は、行為当時未確定であった医学的知見を基礎に遡及的に予見可能性を肯定し、具現化以前を起算点とした。

 これは未確定損害に関する最高裁法理に反する。

2 未確定損害の処理の誤り

 損害は病名単位ではなく、保護されるべき利益の侵害の内容・程度により評価されるべきである。
 本件では、原審が起算点とした時点以降に、障害等級の重篤化が発生し、訴訟提起の後には身体耐性の限界到達、最終医療手段の消滅ともいえる、質的転換さえ生じている。

 これらを「同一損害」とした原審判断は法解釈を誤っている。

第2 憲法32条違反

 進行性障害かつ医学的不確実性が濃厚な事案において、損害発生前の段階で請求内容の確定を要求することは、実質的に裁判を受ける権利を奪う。   
 さらに、長期にわたり後遺症の存在を否定する制度運用がなされてきた事実の下で、後発的知見を逆算的に適用して請求を排斥することは、信頼保護原則にも反する。

 よって原判決は憲法32条に違反する。

第3 憲法14条違反

 進行性重度障害を固定的損害と同一に扱い、未確定損害の特質を無視する解釈は、合理的配慮を欠き、実質的平等原則に反する。

以上


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【原審判決(大阪地裁)批判】

2026年2月25日 原審批判の要約版を追加
森永ヒ素ミルク中毒事件資料館 岡崎久弥

結論ありきの構成

 森永ヒ素ミルク中毒事件大阪訴訟の一審判決(2025年11月29日・大阪地裁・野村武範裁判長)について、当館はまず、この判決が「結論ありき」、すなわち原告請求棄却を前提に論理が構成されたものであると指摘する。
 途中で裁判官が交代した経緯も踏まえて、判決文には演繹的構成が意図的に持ち込まれ、その政治的・制度的目的は明白である。

病名告知を強引に起算点にする愚

 最大の争点・問題点は、原告に対して、裁判所が「除斥期間」を適用し、その起算点を医師による病名告知日に設定した点である。
 これは、乳児期にヒ素を摂取させられ、数十年にわたり多様かつ高い進行性の後遺症に苦しむ被害者の実態を無視し、非科学的・非医学的に一つの疾病告知のみを切り出して権利行使を封じるものである。

 結果として、懸命に治療に専念し、症状の進行を食い止めようと努力してきた被害者ほど、知らぬ間に裁判を起こす権利を失うという逆説的で残酷な結論が導かれる。

後知恵バイアスを密かに悪用。症状固定なく損害を知ることが可能と強弁

 判決の論理に従えば、被害者は将来の最悪の状態、すなわち「死」を含む究極の被害を事前に予見し、それを客観的に証明する手段を探し出し、その確信のもとで除斥期間内に提訴しなければならないことになる。

 しかし、症状が固定せず、変動し続ける重症患者が、損害を確定することは不可能であり、そもそも起算点は訪れていない。

 加えて、厳しい治療と貧困な生活に追われながら、病名から将来の損害を予測して訴訟準備を行うことも不可能である。

健常者の言論さえ「つぶす」包囲網──訴訟アクセスの困難性

 「ひかり協会」や「守る会」は、この数十年にわたりメディアを利用して「事件は円満に解決し被害者は被告との協調関係に満足している」「被告からの施策より行政協力による公的資金の活用が望まれる」などという被告責任を免罪する印象操作を全力で実施してきた。関西テレビもこのような三者会談合意を無視しても、強引に進める「作為的な政策」を、真実であるかのように映し出した。

「行政協力シフト論での免罪」「ヒ素ミルク飲んで良かった」宣伝で、重症被害者を包囲

 このような被告負担の軽減を図り、被告責任への過少評価を醸成する企図に基づく異様な宣伝によって、救済での問題点を指摘したり異論を提示する事件被害者や関係者が、弾圧されたり、社会から孤立化させられてきたことは、数々の書証で明らかだ。「守る会」は、ルポライターへの誹謗中傷行為で、裁判闘争を招き、有罪判決をうけている。それほど異様なものだ。

 同時にそもそも、重症被害者にとっては、弁護士へのアクセス自体が困難であり、この判決は事実上「裁判を受ける権利」を奪う宣告に等しい。

「除斥」を適用してはいけないケース

 そもそも除斥制度は、一般的な債権関係の安定を目的として導入された概念であり、乳児期の公害被害のような人権侵害に対して、機械的に適用すること自体がきわめて不適切である。学界においても除斥概念の不要性は指摘されており、刑事分野では時効の廃止・制限が進んでいる。にもかかわらず、本件判決は「法的安定性」を理由に、重症被害者の救済を切り捨てた。

ゆがんだメッセージを発信

 さらに被告企業は、事件から70年を経てもなお十分な反省を示さず、被害者救済運動への介入や分断工作を続けてきた疑いが指摘されている。

 そのような特殊性を一切考慮せず、除斥を適用した本判決は、倫理的にも重大な誤りであり、「乳児期でのヒ素摂取を被告に強いられ、重大な予測不能の疾病に向き合い懸命に治療してきた者、むしろそういう者から真っ先に排除されていく」という歪んだメッセージを社会に発するものである。

以上

【関連記事&資料】

[高裁判決⑩] 森永ヒ素ミルク中毒事件 大阪訴訟、一審、二審判決の法解釈上の誤謬について

https://note.com/no_more_morinaga/n/n2eac7e228174

口封じ①──現「被害者団体」の「報道ガイドライン」

https://note.com/no_more_morinaga/n/n28a956e6bdbe

「関西テレビ」による虚偽の宣伝 p.25ご参照

https://storage.googleapis.com/studio-design-asset-files/projects/BVqX0EmPqR/s-1x1_b5da9973-742c-4dbd-b5da-3320c92cfa7b.pdf

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森永ヒ素ミルク中毒事件資料館  岡崎久弥

森永ヒ素ミルク中毒事件資料館 岡崎久弥

https://morinaga-arsenic.jp/ 1955年原乳腐敗を隠すため産廃由来のヒ素混入物質を入れた森永乳業粉ミルクで130人以上の乳児死亡1万3千人の患者。森永は国を使い20年間救済運動を弾圧。不買運動で渋々救済案に応じるが不正な工作を続け2022年提訴された。

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