写真はNHK報道画面

大阪の重症被害者女性、森永乳業を提訴   大阪裁判 2022~

2022年5月25日、大阪在住の森永ヒ素ミルク中毒事件の認定被害者Aさんが、森永乳業株式会社を相手取り、5,500万円の損害賠償を求める訴訟を大阪地方裁判所に提起した。

Aさんは、1955年に発生した森永ヒ素ミルク中毒事件によって脳性まひなどの障害を負い、長年にわたって生活上の困難を抱えてきた。さらに、近年、症状が急激に進行・悪化し、日常生活にも深刻な影響が生じている。裁判係争中でさえ、大手術を受けている。

Aさんは、現在の救済制度では自身の被害に対する十分な救済が得られていないとして、森永乳業に対する損害賠償請求に踏み切った。

提訴は全国の報道機関によって報じられ、森永ヒ素ミルク中毒事件が、発生から67年を経てもなお、被害者の生活と健康に影響を及ぼし続けていることを社会に示す機会となった。

認定被害者の症状と因果関係をめぐる争い

2022年7月19日に開かれた第1回口頭弁論で、森永乳業側は「除斥」期間経過を理由に、請求棄却を求めた。

報道によれば、森永乳業側は事件について「謝罪の気持ちがある」とし、社会的責任を負っていると主張した。ところが、一方で、Aさんの脳性まひが森永の粉ミルクを飲んだことに起因するかどうかについては争う姿勢を示した。

この主張は、今回の訴訟における重要な問題となった。

Aさんはすでに、森永ヒ素ミルク中毒事件の国の認定被害者である。これまでの救済制度は、基本的に事件当時の粉ミルクを飲用したことが認定された被害者を対象として実施されてきた。

未だ、ヒ素摂取と後遺症の因果関係を認めない森永

そのため、認定被害者について、個々の症状と事件との因果関係を改めて争うことは、これまでの救済の考え方を大きくくつがえすものだ。

同時に、森永乳業が、実のところ事件を内心ではなんら反省していない姿勢を明瞭に示す結果となった。

認定被害者に対して、個別の症状について因果関係を争うなどと言い始めれば、救済制度そのものの前提も反故になるからである。

つまりは、今の資金拠出は、裁判と不買運動で追い詰められた加害企業が、仕方なくお約束を迫られたからであり、企業の本音は、まったく別であるという事になる。

国と森永により67年後も続く被害

森永ヒ素ミルク中毒事件は、1955年に発生した。

しかし、被害者が現在もその影響を受け続けている以上、事件を単純に過去の出来事とすることはできない。

ゼロ歳児の乳児が猛毒のヒ素を摂取させられたのである。その後遺症がどこまで波及するか医学でも未知とされている。しかも事件後、被害児の見守りを、国と森永は一切、無視した。

そういう国と森永の罪により、長期にわたる障害や、その障害自身が生み出す副次的な作用により被害が後年になってさらに深刻化しているのだ。

Aさんの提訴は、こうした長期的な被害の現実、森永が生み出し、国が「官製検診」による「後遺症無し」を宣言して被害者家族の訴えを20年弾圧・放置したことによる、後遺症の悪化の現実を社会に示した。

救済制度への疑義

また、この訴訟は、森永乳業の企業責任だけでなく、長年にわたる「救済」への疑義を提起した。

救済制度が存在していても、個々の被害者は、当然、企業に対して独自に権利を主張できる。これは恒久救済対策案自身が、条文に書いていることだ。創案者は、この制度で全被害者の要求を支配しようなどという傲慢なことは考えていなかったし。法的に無理だ。だから「個別請求を認める一文」をかくことを忘れなかった。

事件は終わったのか

森永ヒ素ミルク中毒事件では、発生直後から被害者とその家族が被害の実態を訴え、全国の市民や支援者も長年にわたって事件の解決を求めてきた。

その後、恒久的な救済を目指す制度が形成されたが、救済のあり方をめぐっては、その9割が放棄されており、事実上「羊頭狗肉」と化していると厳しい批判がある。

Aさんの訴訟は、長年にわたって積み重ねられてきた被害者の苦痛と、救済制度のあり方に対する問題提起を、司法の場に持ち込んだものである。

加害企業に異議を唱える被害者を黙殺する「被害者団体」

被害者団体と称する「森永ひ素ミルク中毒の被害者を守る会」はこの裁判の原告を、一切、支援していない。その思考方法は極めて特異で排他的である。

また「公益財団法人ひかり協会」も支援の意志さえみせていない。それどころか理事長は裁判の証人尋問で、後遺症に苦しむ原告を前に「ヒ素ミルクを飲んでよかったという被害者もいる」と公言した。弁護士から「(重症被害者のため)被告企業と交渉したらどうなんですか」と問われると「そういう方法がいいとは思いません」と言い切った。

異常を通り越す

これでは、「被害者を守る」の看板は書き換えなくてはならない。

「ひかり協会」は「公益財団」の名称を返上せねばならない。公益に奉仕していないからだ。

またこの団体の進める「行政協力」をしきりに「報道」する一部媒体も、大阪裁判を見事に黙殺している。

その姿勢は極めて露骨であり、ひとりの原告を、一刻も早く社会から消し去ろうといわんばかりの構造が、完成している

Aさん一人の問題にとどまらない

森永ヒ素ミルク中毒事件は、日本の食品公害の歴史における重要な事件である。同時に、企業の責任、被害者救済、行政の役割、報道のあり方など、現在にもつながる巨大な問題をはらんでいる。

事件から67年を経て提起されたAさんの訴訟は、社会に一つの大きな問いを投げかけた。

森永ヒ素ミルク中毒事件は、終わっていない。産業公害も、食品公害も、薬害も全く終わっていない。次から次へと生み出されている。

善悪の基準を見失った社会

日本社会は過去半世紀近く「日本社会は公害を克服して一流の国になった」という大合唱をしながら、加害企業の嘘、美辞麗句を操る政治勢力の嘘、宣伝の嘘、人間の嘘という「巨大な嘘のシンジケート」に埋没し、善悪の基準を見失った社会になっている。

本資料館では、Aさんの訴訟の経過と関連資料を記録し、森永ヒ素ミルク中毒事件が現在もなお続く問題であることを伝えていく。

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1.WHO  [世界保健機関] 搾取的粉ミルクマーケティングの衝撃的レポート   [1]    [2]      [3]    /   WHOが乳幼児食品業界に対し搾取的粉ミルクマーケティングの中止を要求  [1]   粉ミルクとタバコは、国際的な販売禁止の勧告がある唯一の二つの製品である  [ 2 ]     [3]   / 2.United Nations University Press    [国際連合大学出版]  技術と産業公害> 森永ヒ素ミルク中毒事件      [English Version]  [1] /3.Report of Morinaga Arsenic Milk Poisoning Incident [English Version]   [1]        [2]  

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