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2026年2月9日 14:16
大阪裁判のため公開が遅くなったが、本年1月下旬から、“世界同時多発の粉ミルク汚染” ともいえる事態が、欧州と米国で発生している。
欧州のグローバル企業各社の粉ミルクが、各社が共通して購買していた添加物に汚染され、その影響が世界に波及している。
さらに時を同じくして米国発の粉ミルク汚染も…。
利幅の大きい粉ミルクで長年儲けてきた巨大食品企業のずさんな経営が、各国の市民社会に牙をむいている。
ロイター通信によると、今年に入った1月23日、フランス保健省は「フランスの捜査当局が、粉ミルクを摂取した二人の乳児の死亡を調査している」と発表した。(まだ捜査中で、因果関係は確定されていない。)
欧州では1月下旬ころから、ネスレ、ダノン、ラクタリスなどのグローバル企業の粉ミルクが大規模に汚染されたとして、世界的規模での回収が始まった。AP通信によると、ネスレだけで60か国の回収、ロイター通信は「70か国に影響」と報道。
汚染は、ネスレのSMA、Beba、Guigoz、Alfaminoなど複数のブランドに及んでいて、史上最大規模のリコールになっている。
ネスレは「食品の安全とすべての乳児の健康は、私たちの最優先事項であり続けます」などと声明を発表している。
だが、ネスレは、ずいぶん前から、パキスタンでの「汚れたミルク」問題(1997年に発生、ネスレ・ボイコット運動の契機となった)や、乳幼児向けシリアルでの糖分過剰問題(先進国向けには砂糖を抜き、発展途上国向けには砂糖を加える)などで厳しい批判があることを忘れるわけにはいかない。
消費者団体は、「追跡可能性の欠如や公的警告義務の遅延」などネスレの「不透明性」に疑問を呈し、行動を計画している。
国際NGOの「フードウォッチ」は、「敏感なベビー商品の即時追跡を保障するはずのネスレが、多くの国での断片的な情報の拡散や、リコールの遅れをどう説明するのか」と厳しく批判している。ネスレは「関係する商品での疾病は確認されていない」と述べている。
当館は3.11福島原発事故の時から「フードウォッチ」の活動に注目している。
なお、添加物原料の供給元についてフランス当局は企業名を明かさず「中国のひとつのサプライヤー」としか言及していない。
ところが、フランスの企業ニュートリビオがAFP通信に明かしたところによると「カビオからの警告を受けてリコールが行われた」とある。
中国・武漢に本拠をおくカビオ・バイオテック(Cabio Biotech)は主に乳児用調整粉乳(粉ミルク)や食品に使われるアラキドン酸(脂肪酸ARA)の世界最大級の生産企業と言われる。だが、同社は、この件に関して公式の声明を発表していない。(注:中国のサイトへリンクします→ 嘉必优生物技术(武汉)股份有限公司)
その後、フランスのシャルトルに拠点を置く児童保険協会は、パリ裁判所に提出した緊急命令のなかで、政府に対し、“カビオ・バイオテックが製造したARAオイルを含むすべての粉ミルクを24時間以内に回収するよう企業に命じる” ように求めた。
ちなみに、中国では2008年、通常はプラスティックの製造に使われるメラミンを、検査をごまかして品質を良く見せるために粉ミルクに投入した事件「粉乳メラミン事件」が発生し、数十万人の乳児が被害をうけた。被害者の多くが腎不全などを患い、6人が死亡している。
中国・香港系メディアは、この事件を通じて、中国政府は食品安全に敏感になった、と発信しているものがあるが、事実は異なる。
中国政府は、現在、メラミン事件の被害児には、森永ヒ素ミルク中毒事件の日本政府のやり方を真似て、「一定の補償額に納得しないものは無視する」というやり方を採用している。これは森永ヒ素ミルク中毒事件での「五人委員会」の方式を中共政府が採用したものだ。
また、救済を訴えた被害者団体の父親を「社会を混乱させた罪」で逮捕して拘禁刑に処し、長年にわたり、手かせ足かせの拘束具で監禁してきた。
こういう国が製造する添加物を粉ミルクに投入するとは、欧州企業の感覚も鈍い。
フランス「ル・モンド紙」によると、乳児の最初の死亡例は、昨年2025年12月25日に生まれた赤ちゃん。今年1月8日にフランス・ボルドー郊外のペサックのオー・レヴエック病院で死亡した。
ボルドーの検察官ルノー・ゴードゥール氏は「産科病棟から退院後、乳児は1月5日から7日の間にバチルス・セレウス菌(Bacillus cereus bacterium)による汚染の可能性を恐れてリコールされたギゴズ(Guigoz)ブランドのミルクなどを投与された」と語った。
ちなみに、ギゴズ(Guigoz)は前述したように、ネスレがフランスで展開する乳児用調整粉乳(粉ミルク)のブランドだ。
またフランス・ロワール地方のアンジェでは、2025年12月23日に死亡した生後23日の女児の母親が検察へ連絡し、ギゴズのミルク缶について語ったとされている。
この粉ミルクを摂取した入院乳児では激しい嘔吐と内臓疾患が観察されているとの情報もあるがニュースソースが確認できない。被害児の臨床情報が少なく、懸念される。情報が共有されないと、医師の診断からの漏れが発生しかねない。
原因は「母乳に近い粉ミルク」と謳うために投入されていた、オメガ6脂肪酸としての中国製の添加物ARAオイルが「セリウリド」に汚染されていたことにあるようだ。
セリウリドは、土壌中にいる「セレウス菌」(Bacillus cereus bacterium)が食品内に入り込んだ際に作りだす非常に強力な耐熱性毒素、ミトコンドリアを破壊するサイトキシン=「細胞毒」だ。(細胞毒は、人間の細胞に対して「死」⦅ネクローシスやアポトーシス⦆、もしくは機能障害や増殖障害を引き起こす。アポトーシスでは、細胞核の凝縮やDNAの分解なども発生する。)
セリウリドは、100℃以上126℃の加熱にも耐え、熱、酸、消化酵素でも分解されない。食中毒の毒素として以前から知られている。
その中毒症状には、嘔吐型と下痢型があり、急性肝不全を引き起こす可能性もある。
また免疫が抑制された人には、心内膜炎、髄膜炎、肺炎を起こすこともある。(ちなみにネスレは、髄膜炎の乳児が発見されたのちに、「セリウリドは髄膜炎を起こさない」などと言い始めた。)
欧州食品安全庁(EFSA)は、科学者たちがセレウリドの最大濃度を体重1キログラムあたり0.014マイクログラムと提案したと発表したが、「Foodwatch」は、これは多国籍企業が閾値(しきいち)に注目していると「気をそらす戦術」だと非難した。
「そもそもセレウリドは存在してはいけない」と主張している。「赤ちゃんに健康リスクをもたらす製品を販売することは違法だ」と付け加え、セレウリドをネズミの糞に例えた。「乳児用ミルクに含まれているネズミの糞についてヨーロッパの基準はありません。それでも、禁止されている」とFoodwatchは述べている。
シンガポール政府は、ネスレ(Nestlé)とデュメックス(Dumex)の製品をリコールしているが、同国企業のSMCニュートリション(SMC Nutorition Pte.Ltd)が輸出向けに生産する乳幼児用粉ミルクにも同じ原材料が使用されていることが確認されており、輸出停止となっている。
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危惧を抱くのは、欧州のグローバル企業では、10年近くまえから粉ミルクが、バクテリアや、発がん物質を含むオイルで汚染される事件がたびたび発生していたことだ。
当資料館は、2018年、2019年に外電から察知し、ブログに掲載したが、残念ながら日本メディアはほとんど書かなかった。(むしろ、母乳育児を勧める風潮を批判し、粉ミルクの普及キャンペーンを張った大手メディアまである。)
世界最大規模のグローバル企業として慢心していた欧州のメーカーは、ずいぶん前から杜撰な製造を続けていた。2018年にサルモネラ菌中毒で数十人の乳児の被害者を出したフランス・ラクタリス社の粉ミルクは、そのさらに10年以上前の2006年から汚染されていた可能性があると、フランスのパスツール研究所が指摘している。つまりは20年近く、異常な状態が放置されていたということだ。
大規模汚染は、すでに時間の問題となっていたといえる。
粉ミルク汚染、欧州で続発 2018年記事 : 市 民
今回の事件をみていて、森永ヒ素ミルク中毒事件の被害者遺族として、真っ先にピンとくるのが、「母乳に近づける」という、うたい文句である。
これは、日本では森永乳業が、1955年の森永ヒ素ミルク中毒事件発生より前から、先陣を切っておこなっていたキャンペーンでもある。
大量宣伝により、今や「粉ミルク」は、母乳と同じか、むしろ母乳より栄養があるかのように社会に刷り込まれている。もちろん、チマタの「ビタミン信仰」と変わらないのだが。
森永乳業でいえば、このような「粉ミルク=母乳」のイメージを作り上げるために、多数の添加物を投入する習慣となっていた。この習慣が、腐りかけのミルク原料を偽装するために、有害で致命的な二つもの添加物を投入する結果につながったともいえる。
森永乳業は、営業優先で、原料調達に歪みが生じ腐敗しかけた原乳使用を隠すため、産業廃棄物由来の第二燐酸ソーダ(産廃由来によりヒ素などが混入)を「安定剤」(腐敗をごまかすための薬剤)として投入した。
未だに、欧州の多国籍企業も、相変わらずこのような謳い文句で母親に売り込んでおり、中国から仕入れた添加物に汚染物質が混入したことになる。
販売促進のため、消費者にビタミン信仰を刷り込みながら、得体のしれない、ずさんな添加物を投入したことで乳児に打撃を与えたという意味では、森永ヒ素ミルク中毒事件と非常に似た側面があると言える。
ただ、補足すると、森永の方が、はるかに確信犯である。
森永は、事件当時、製造段階でヒ素混入の第二燐酸ソーダを投入していたが、その前工程にあたる原料の運搬段階から、当時、食品に投入してはいけないと規制されていた違法薬物である過酸化水素水を投入していた。
後者の過酸化水素水の投入は、ヒ素中毒の衝撃に隠れてしまい、忘れられている。だが、腐敗寸前の粗悪原料を使って粉ミルクを製造していることを森永乳業自身がもっとも自覚していたことを示す重要な事実である。

まだ、発生直後だが、英国の経済紙『ファイナンシャル・タイムズ』紙の報道は総括的でわかりやすいので、要点をピックアップした。
〝 危機の根底には、乳児用粉ミルクのますます複雑化する組成とそのマーケティング方法についての議論を再燃させている。出生率の減少のなかで、企業は「親の忠誠心」を勝ち取ろうと競争している。信頼の損失は、リコールよりも長期となり、構造的な市場シェアの減少、ブランドの損壊、戦略的な撤退につながることもある。〟
〝 欧州の消費者保護団体Foodwatchは木曜日、フランスでネスレや関係企業、さらに欧州当局に対して、汚染について消費者に適時に通知しなかったとして法的苦情を提起した。〟
「粉ミルクメーカーは、市場に出している製品の安全性を保証する法的義務がある」と、フードウォッチの広報ディレクター、イングリッド・クラグル氏は述べた。「我々が対象にしている企業は、ひどい怠慢を示している。〟
〝 ビタミンなどのサプリメント、腸の健康を改善するためにヒトミルクオリゴ糖(HMO)と呼ばれるプレバイオティクス、乳児の脳機能や免疫発達を改善するARA。しかし、研究者たちはこれらのサプリメントの有効性について議論している。〟
〝 企業は免疫力を高めると主張し、脳の発達が強化されると推測し、これらはすべて、家族が子どもたちに最高のものを与えたいという願望に訴えかけている」とクイーンズ大学ベルファスト校の母子保健学教授ナイジェル・ローリンズ氏は述べた。「しかしながら、比較研究のいずれもが、知的発達や免疫における臨床的な差異を実証していない。母乳と授乳は生物系全体と相互作用する。添加成分だけの問題ではない」〟
〝 粉ミルクのサプライチェーンが複雑化する中、国際ベビーフード行動ネットワークを含むキャンペーングループは、世界保健機関(WHO)に対し、製造過程での汚染リスクを親に警告することを含め、基準の更新を求めている。〟
〝 英国の競争監視機関による最近の調査では、メーカーが乳児用調製粉乳に「法外な」価格を請求していると結論付けられた。その調査結果の中には、プレミアム製品ラインの原材料のコストが標準製品のものより高くないことも含まれていた。〟
アメリカ公共放送PBSは、2026年1月28日、AP通信の報道として、ニューヨーク市に拠点を置くByHeart社製の調整粉乳(粉ミルク)がボツリヌス菌に汚染されていた事件を報道した。
事件は、すでに2025年の11月に明らかとなっていて、昨年8月からアメリカ全土で多数の「乳児ボツリヌス症」が報告され、FDAが調査していた。
2025年11月頃には全米13州で23例が疑われていたが、11月19日までに感染者数は15州31件に増加、11月以降、ByHeart社が全国でリコールに乗り出した。その後、未開封の粉ミルク容器からボツリヌス菌が検出された。
現在、乳児の親たちが同社を相手取った訴訟を起こしている。
欧米の事態は、まだ始まったばかりである。動向を注視したい。
(つづく)
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1955年、原乳の腐敗を隠すため産廃由来のヒ素混入物質を投入した森永乳業の粉ミルクで130人以上の乳児死亡、1万3千人の患者。反省なき森永は国を使って20年に亘り救済運動を弾圧。不買運動で倒産寸前となった森永は渋々救済案に応じるが、以降も不正な工作を続け2022年再び提訴された。
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【激震欧州①】欧州グローバル企業の粉ミルク60か国でリコール。米国ではボツリヌス菌中毒…。|森永ヒ素ミルク中毒事件資料館 岡崎久弥
https://note.com/no_more_morinaga/n/n8be1f379b6da